第3回 整備士が語る、接客のこころ

前回は、花岡さんと有我さんの数多い経験をもとに、愛車を長持ちさせる方法やドライバーにできる日常点検のポイントを主なテーマとして、整備士がどのように整備に取り組んでいるかを話していただきました。今回は、点検・整備を行う上で重要なポイントのひとつであるお客さまとのコミュニケーション、「接客のこころ」について話していただきました。

●怒られた人ほどじっくり付き合う

検査の内容や整備箇所をきちんと説明し、理解していただくことが大切です

▲検査の内容や整備箇所をきちんと説明し、
理解していただくことが大切です

“整備士”になってよかったと思う瞬間についてお二人にお聞きしたところ、異口同音に「ありがとうという感謝の言葉をお客さまからいただいたときがいちばん」とおっしゃいます。そうした言葉をいただけるのは、お客さまとのコミュニケーションがうまくとれているからでしょう。親しくなるために心がけていることについて花岡さんに伺うと、「怒られた人とじっくり付き合うことです」と意外な答えが返ってきました。
「いちばん親しくなれるのは、なぜ怒られたのか、怒られた理由を判断して誠心誠意対応したときです。怒られたからといって逃げずに、しっかり対応すれば絆が強くなり、かえってほめてもらえるんです」とおっしゃいます。
「入社したてのころは、誰でも怒られるのはつらいことです。でも、きちんとお付き合いできるようになり、今のようにお客さまと良い関係が築けるようになると、『怒られたときもチャンス』と思うようになる」そうです。

●整備士の意見はきちんと聞いて欲しい

お客さまの中には車検と点検整備の違いをきちんと把握していない方もいらっしゃいます。車検はあくまでも国が検査を行う時点でのクルマの安全性や公害防止面が基準に適合しているかをテスターや目視によって検査するもので、次の車検までの安全性が保証されているものではありません。
一方、定期点検整備はクルマのトラブル防止や性能の維持を図るための予防整備で、点検の結果、不具合があればそこを整備します。つまり、故障が発生する前に整備をして安全性を確保するというものです。
有我さんは定期点検整備の重要性について「ユーザーの方にきちんと把握してほしいと思っています。部品交換や修理をおすすめするのは、お客さまのクルマのトラブル防止や性能の維持のためですから」とはっきりとおっしゃいます。また、「部品交換や修理が必要な場合でも、事前に必ず見積もりをして、『これだけ掛かりますよ』とお伝えしています」と話しています。
ところが金銭的な判断だけで「車検をしたから大丈夫。部品交換は必要ない」と断るお客さまもいるそうです。「こまめに整備しているほうが故障してから修理するより支払う金額も少ないし、安全性も高いのですけどね」とお二人は説明してくださいました。
「こんな話ができるかどうかも日頃からお客さまときちんとお付き合いできているかどうか。そこに大きなポイントがあると思いますね」お客さまとのコミュニケーションの大切さについて、花岡さんはそう締めくくってくださいました。

●珍しい道具は修理にこだわった結果

珍しい道具は修理にこだわった結果

安全への思いがお客さまとの緊密なコミュニケーションにつながっているように、整備士の方がお持ちの‘道具’にも、お客さまの愛車をしっかり点検・修理するための思いが詰まっています。
花岡さんの工具箱は、見ているだけでも楽しくなるような色とりどりの珍しい工具で満たされています。第1回の話に登場した有我さんのレンチもそうですが、道具が好きということだけではなく、お客さまの安全や公害防止のために、どうしたら作業がしやすくなるか、きちんと修理するにはどうしたらよいかと考えた結果、いろいろな道具が揃ったということでしょう。
工具への愛着は、そのままお客さまの車への思いと言えます。

今回の話で、整備士の方はお客さまの安全性を一番に考え、それを実現するためにきちんとコミュニケーションしていることがよく分かりました。プロの意見を聞くこと、その重要性も理解できました。次回は、最終回として、まとめの話をしていただく予定です。お楽しみに。

※全日本自動車整備技能競技大会
(社)日本自動車整備振興会連合会が主催し、各都道府県の自動車整備振興会の行う整備技能競技大会入賞者等(ディーラー等所属の整備士は除く)が出場する。
第一線で活躍している自動車整備士の技能評価と整備士相互の連帯交流を強めるとともに、整備業界の発展と自動車の安全確保及び環境保全に寄与することを目的として2年に1回実施されている競技大会。